<感想文>致知2023年9月号 新エネルギーの創出に挑む

講師コラム

新エネルギーの創出に挑む 

町おこしエネルギー会長 沼田昭会長 × 良知経営社長 濱田総一郎対談を読んで
(致知2023年9月号)

お二人の対談の前半部分は、沼田氏の業務スーパーを経営する舞台での「ものの見方・考え方・取り組み」について具体的事例を述べながら紹介していました。後半は、沼田氏の新しいチャレンジとしての地熱発電での挑戦を語っています。

私が沼田氏に感じた事は、業務用スーパーを日本に広めていった経営手腕の詳細が舌を巻く内容でした。その長い経営の中でクリティカル(急所)となる点を、知恵を絞ってブレイクスルーするという印象を持ちました。それは、今まで問題としていたものを飛び越えてしまいような、着想(ゴールの提示)であると言う感覚です。経営者として指し示すビジョンが、あいまいな理想ではなく、強い意志を持って理想世界の実現していくものであると、革命者的なリーダシップを感じます。

これについて具体的に読み取れる本文個所を述べます。
・濱田社長は、業務用スーパーの沼田会長の事を「こんなとんでもない脳みその持ち主がいるのか」と衝撃を受けた
・沼田氏は事業に必要と思えば、工場から機械からすべてを自前で作ってしまわれる
・小売業を成功させるためには、「販売に重きを置くのではなく、品質や価格で差別化できる商品を開発するよりほかはない」という考え。
・お客様の家庭環境のトレンドを見ながら、これからは「賞味期限が長い」冷凍加工食品への着眼。また、売場が保管庫を兼ねる一石二鳥の店づくり。
・経営に行き詰まった食品工場の経営を引き受け、それぞれの技術を商品開発につなげていく。納豆工場では、アイテムを絞り効率化したり、牛乳パックに入った大きな羊羹の企画商品。それは、牛乳を売るより、単価が高く、賞味期限が長く、お客もコスパがよくて好評。うまくいかない経営の仕組みを、うまくいくように変容させる。
・沼田氏が考える経営において。大切なのは売り方が上手になるではなくて、売る商品をいかに熟知するか?最終的な経営構造をどう描いているかが大事。

総括し読み取れる私が考える沼田氏像ですが、
1.課題同士の解決レベルを上げ、新しいスタンダードを実現させてしまう実行力の高さ。
2.経営の足元は、コスト意識や商売感覚を仕組みとしてしっかり。基本は利益を出し経営を回すといった実利に基づく経営。
3.革新的なことを行うが、腕力では行わない点。関係者が協働してくれるかというレベルの高い課題を設定する姿。
という印象で、とにかく課題に対して頭を柔らかく、一石三鳥の解決策の解決策で実現させてしまう方だなと思いました。

その方が、なぜ?60代になって「自然エネルギー」に取り組んでいるのか?普通に考えると、点と点でつながらないと思いますが、私はこの転換に以下の文脈が気になりました。

・50歳でステージ4甲状腺がん。私利私欲を捨てて、滅私奉公に生きようと思う。
・沼田氏の考える日本のエネルギー構造の危うさ。国産エネルギー12%の自給率は、日本の急所になる。国産エネルギーと地方創成を融合した事業が夢となる。
・地熱発電のビジネスモデルは、一度稼働すれば半永久的に動き、燃料費もない。長期的に見たら、低コストなクリーンエネルギー。しかし、日本の地熱資源は優れているのに割合は0.3%と低く、稼働するまで20年かかる。
・急所となる、地熱が当たるかどうかの点。当たれば、15年間で200億の売上、試験掘りはで当たる確率は1%、1回5億。
・急所に効率よく挑戦できるように、通常はフルオーダーの地熱発電所を、アイデアで共有化できないかを着手。
・2その結果、なんと掘削機で自前のものを開発。と共に、掘削技術者養成の専門学校を設立。一石二鳥。
・発電事業に関しても、点で考えず面で見る点。例えば、発電の過程で生まれる熱水を、野菜栽培や養殖に活用。雇用と、地域活性化をねらい、生産性も高める。一石3鳥。
・おまけのもう一鳥。自然エネルギの太陽光発電も、耕作放棄地と組み合わせ、パネルの下では羊の放牧で雑草を取り除き、農地をよみがえらせる。

前半の、経営の取り組みと急所となるところを押さえる力と、課題を飛び越えてしまう解決策の提示、人々が協働できるビジョンを掲げられる点など多くの共通点と、今までの知見を活かして「私利私欲を捨てて、滅私奉公」に繋がっているように私には感じとれました。

柔軟な頭で、経営者の持つ責任と、やりがいを強く感じさせていただける対談でした。

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